――初期によく部外者、どうかするとテレビの専門家からさえうけた質問は、
「アニメは脚本を先に書くのか、後から書くのか」
というやつだ。たぶん質問者は、できた絵に合わせて台詞だけ書くのがシナリオライターだと思っていたのだろう。冗談ではない。話も人物もないのに、だれがどうやって絵を描くのか。アニメの脚本はいわば神だ。光あれと書けば光が描かれる。無から有を生むことこそ、ほかに求められないアニメの醍醐味なのだ。キャラクターの魅力にせよ、ギャグやアクションにせよ、すべてシナリオに書き込まれなければ、なにひとつはじまりも終りもしないのである。(辻真先『TVアニメ青春記』)
書評を愉しむサイトBookJapanがトークライブイベントLive Wireと組んでお届けする12月のトークショー第2弾は、「辻真先・79歳傘寿未満。いまだ現役。テレビ・アニメ&特撮人生大回顧 #1」です。傘寿を目前に控え、今なお脚本家として現役である辻真先氏をゲストにお迎えし、氏のアニメ脚本家生活を振り返っていただくイベントを連続でお届けしていきます。氏が最初に携わったアニメ作品は平井和正原作の『エイトマン』。その後で虫プロから声をかけられ、『鉄腕アトム』にも第79話「ドクター脳」から参加している。その貴重な体験談を観客と一緒にお聞きしたいと思うのです。
第1回は、氏の脚本家前史から虫プロで手塚治虫原作アニメ「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝レオ」の製作に携わった1965年まで。後に一家をなすことになる多士済々の面子が集った、梁山泊のごとき当時のアニメスタジオの雰囲気などについて振り返っていただこうと思っています。黎明期ということもあり、冒頭に引用したような勘違いも多くあったことと思います。そうした体験談についてもどんどん聞いていきますのでお楽しみに。もちろんLive Wireのイベントですから客席からの質問も歓迎です。辻さんのお話をうかがって、楽しい一夜にしていきましょう。
これは余談になりますが、聞き手を務める杉江松恋が関心を持っているのは、文化の受容者としての辻真先の柔軟さ、貪欲さです。初めてお会いしたのは何年前だったか覚えていませんが、そのときの会話で「辻先生は今でもジャンプをちゃんと読んでいらっしゃるんですか」と驚愕したことを記憶しています(たしか『デスノート』のお話になりました)。「おもしろいもの」「わくわくするもの」を追い求めようとするその姿勢はどのように形作られてきたのか。どういう風に生きれば辻さんのように「枯れない大人」になれるのか、が今回のトークの裏テーマであるといっていいと思います。枯れない大人に私もなりたいなー。なりたいよね。
日時:12月12日(月)午後7時開場、午後7時30分開演。
場所:新宿五丁目、道楽亭。
http://www.ryus-dourakutei.com/pctop.html
料金:前売券1500円、当日券2000円。
詳細・前売りはこちらへ→http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=37055409
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