2011年12月7日水曜日

「このミステリーがすごい!」23年の軌跡をふりかえるイベントやります!

まだJICC出版局といっていたころの宝島社が1988年に刊行した最初の「このミステリーがすごい!」の表紙には「ミステリー中毒者が選んだベストテン’88」「百発百中のミステリー&エンターテインメント・ガイド」といった煽り文句に加えて以下のようなメッセージが綴られている。書いたのはおそらく、編集者の石倉笑氏だろう。

 ――ミステリーがブームになるのはいいことだけれど、この出版点数の多さには、マニアも活字中毒者もついていけない。この出版洪水と嵐の中で、見失われた傑作を発見するために、クズ本を読んで貴重な時間とお金を無駄にしないために、そして、興奮と感動の1冊に遭遇するために……この本は必ず役に立つ! 読書の達人たちが選んだ本当のベストテン!

 定価は380円。この1冊からすべてが始まった。
 すでにご存知の方も多いと思うが、「このミステリーがすごい!」は「週刊文春」誌が行っていた年間ミステリーベスト10企画へのカウンターとして企画された。表紙のどこにもそういう記述はないが、「文春」のベスト10が本当におもしろい作品だけを選んだ真のランキングではない、という憤りが一部の読者にはあったのだ。当時、文春のランキング投票権は日本推理作家協会の会員に限定されており、投票者のほとんどが作家だった。実作者の多くはいい読み手であるかもしれないが、新しい本の読者ではない。新刊を追うことが仕事ではない以上、当然のことだ。勢い、「文春」ランキングにはその年の乱歩賞受賞作や話題作など、誰でもそれは読んでいるだろうという作品が並んでいた。そのアンチテーゼとして、日本推理作家協会という権威に頼らないベストテンが企図されたのだ。

 それから23年。週刊文春のベストテンは日本推理作家協会会員以外にも門戸を開き、書店員などにも積極的に枠を与えて一気に「大衆化」した。「このミス」と「文春」のどちらが権威だと思う、と聞かれて「文春」と答える読者はもはや少数派だろう。「このミス」は、こうしたミステリー・ベスト10企画の代名詞として定着化した観もある。
 今こそ原点に立ち返り「このミス」とは何だったのか、を問うべきときに来たのかもしれない。本と書評を愉しむサイトBOOKJAPANは、対話型トークイベントLive Wireと組んで「このミス」の23年を検証する航海へと乗り出そうと思う。その第一弾として「このミステリーがすごい! 2012年版」刊行日にトークライブを行う。とりあえず決定しているゲストは「このミス」草創期からの投票者であり、企画の出発点にも立ち会った茶木則雄氏だ。間もなく四半世紀に及ぼうとする「このミス」の未来を占うイベント、ぜひ熱い観客の来場を乞う!(杉江松恋)

日時:12月10日(土)午後7時開場、午後7時30分開演。
場所:風土カフェ&バー「山羊に、聞く?」(東京都渋谷区代官山町 20-20 モンシェリー代官山 B1F)(東急東横線「代官山」徒歩1分)
http://yagiii.com/
料金:前売券1500円、当日券2000円。
詳細・前売りはこちらへ→http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=37055080

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